2019年08月27日
『サバゲっぱなし』のこと
サバゲーをテーマにした作品は少ない。
その中でも最近特に話題なのが、坂崎ふれでぃ先生の『サバゲっぱなし』である。
サバゲーの話というと、主人公がサバゲーにはまっていくのはもちろんのこと、銃のうんちくや、サバゲーで勝つための戦術や努力していく様子が描かれる……と思うかもしれない。
しかし、本作ではそういった少年漫画的な描写は一切ない。
巨大企業の社長令嬢・木枯ニコは、ただ何事もなく過ぎていく日常に飽きていた。刺激を求めて夜の街をさまよううちに一軒のバーへ辿り着く。そこは壁一面にエアガンが並べられたミリタリー・バーだった。
店のマスターである瓦杜輪と、常連客の明石ナナに誘われ、初めてのサバイバルゲームに参加するニコ。たちまちそのスリルと興奮に魅せられたニコはサバゲーの世界にのめりこんでいく……
これはそんなニコがお嬢様風を吹かせながら時に大胆に、時に無理やりに友人たちを巻き込んでサバゲーに邁進していく様を眺めるオタク趣味漫画である。
この作品で特徴的なのは、サバゲー漫画でありながら、サバゲーをしている最中の様子がほとんど描かれないという点である。長くても3~4ページ、短い場合は見開きの1枚絵だけしかない。
では何が描かれるのか?
中心になるのはサバゲーの前後や合間、つまり前日までの準備する様子や行く途中の会話、セイフティーでの様子、そしてゲーム後の感想で盛り上がる様子なのである。
彼女たちのダベる様子は「サバゲーあるある」で埋め尽くされている。サバゲーマーなら誰しも身に覚えのあることでいっぱいだ。何しろ作者である坂崎ふれでぃ先生自身もサバゲーマーなのであり、現場で取材されたであろう事実が詰め込まれている。
つまりは究極の身内ネタだけで構成される突き抜けた作品でもあり、濃いサバゲーの世界の一端を覗き見ることができる。
また先生の画風も特徴的だ。
昨今のいわゆる萌え系のキャラとは少し異なり、かなりデフォルメが効いている。さらに可愛い女性は出てくるが、それら女性の可愛くない部分、つまり「残念なところ」も隠さずに描いていくのだ。
1コマ当たり、1ページ当たりの絵の情報量も非常に多い。
この「オタク的ノリの良さ」とでも言うのだろうか、それがこの作品にしかない雰囲気を生んでいる。
私もこの作品を読んで影響を受けた一人だ。
3巻に登場したことで「インサートレンズ」の存在を初めて知り、ついには私もオーダーメイドで作るきっかけとなった。
また、トレーニング・ウェポン(トレポン)のこともこの作品で初めて知った(さすがに手は出ないが)。
サバゲーマーなら楽しめること保証付き。
未経験者でサバゲー興味を持っている人にも、ある種リアルな(?)サバゲーマーの様子を知ることができるという意味でおすすめだ(逆に引かれはしないかという不安もないではないが……)。
現在、5巻まで発売中である。
最新5巻では先日このブログでも採り上げたミリタリーVtuber・彩まよいさんともコラボしている。
『サバゲっぱなし』
心の底からサバゲーを楽しみ、エアガンを愛し、軍拡という欲望に負け続ける人々の姿をひたすら追いかける作品である。
ニコさんたちとともにサバゲーがしたくなること間違いなし!
lifeisgunfire at 00:30│Comments(0)│作品レビュー